最高のもてなしをするために最もふさわしきものを選びました。
料亭としては世界で初めてミシュランの三ツ星に輝いた、「玄冶店 濱田家(げんやだな はまだや)」。その店舗は、東京の中心・日本橋人形町に今なお残る、昔ながらの路地にあります。
“お富さん”の芝居や歌でも有名な地名“玄冶店”と、川上貞奴ゆかりの芸妓置屋“濱田屋”の名を受け継ぎ、この料亭が開業したのは大正元年。数寄屋造りの店内には、百年の風格が漂っています。
「料亭というのは、普通の料理店とは違い、お店の雰囲気やサービスまでも含めた、おもてなしを商品としてご提供する所なんです」(仲居:ゆみさん)
料理や酒、玄関の打ち水から床の間のしつらえ、器や庭の景観まで、すべてがお客様へのもてなし。
「大っきなお姉さん達(=先輩)から一番大切だと教えられてきたのは、お客様に楽しんで、満足して帰ってもらうこと。“また来たい”と思っていただくのが、何より大事だと思っています」(ゆみさん)
Coordinate
- オーダーメイド
中心となってもてなしを行なうのは、仲居さん達。お客様の出迎えから配膳の差配、車の手配や見送りまで、すべてを責任持って担当します。「座敷から座敷へ、一日中走り回ることも…。ですからこの店では、仲居のきものは冬でも単衣物。袷のきものでは、動けませんからね」(ゆみさん)
一般には地味なものが多い仲居さんのきものですが、この店では華やかさの中にも落ち着きのある、明るい色目のものを採用。“仲居も明るい雰囲気の方がいい”という、おかみさんの意向によるものです。
「きものは仲居にとって毎日着る作業着ですから、洗濯ができることも大切。特に三ツ星をいただいてからは、前にも増して忙しい毎日で、洗えるきものの便利さを実感しています」(ゆみさん)
老舗料亭にミシュランが三ツ星を与えたのは、もてなしという日本文化を世界が認めた証し。玄冶店 濱田家に冠された星、それは揃いのきものでもてなしに努める、仲居さん達に与えられた星なのかもしれません。