三ツ星シェフと五百年の歴史をもつ老舗和菓子店が
熱い議論を交わして決めたユニフォームです。
富士山の雄姿を間近に望む静岡県御殿場市。その自然豊かな高台に、話題のフレンチレストラン“Maison KEI”はあります。
「そもそもは2010年のパリで、自分の店の開店準備をしていた小林圭シェフと、現地の“とらや”に勤めていた黒川光晴氏が出会い、意気投合したのが始まりです」(シェフ/佐藤さん)
それから10年後の2020年、“Restaurant KEI”のオーナーシェフの小林氏は、アジア人として初めてフランス版ミシュランガイドの三ツ星を獲得。現在まで3年連続となる快挙の始まりでした。
一方の黒川氏は同じ2020年、室町時代後期に創業し、約五百年続く和菓子の老舗“とらや”を引継ぎ、18代社長に就任。この機に二人は長年の計画を本格化し2021年、御殿場にある“とらや工房”の隣接地に新たなレストランを立ち上げたのです。
小林シェフは、料理、サービス、空間、すべて揃うことが、良いレストランの条件だと言います。「ですからお皿やカトラリーも質の良いものを厳選していますし、フロアスタッフも常にきめ細かなおもてなしができるよう気を配っています」(サービス/山口さん)
メニューは小林シェフはじめ、パリのレストランのスタッフとも相談しながら考えているとのこと。
「ただし、パリと同じ料理をそのまま持って来るのではなく、この店独自のスタイルを探さなければと、いつも話し合っています。フォンやソースなどもベースは同じでも、実は少しずつ変化をつけています」(佐藤さん)
「パリの店のシグネチャーに、メレンゲと生クリームとアイスクリームとフルーツを一緒に食べる、ヴァシュランと言う伝統的デセールがありますが、この店ではそこにとらやのあんを加えて、ここでしか食べられないものにしています」(シェフパティシエ/小原さん)
とらやでは富士山の伏流水であんを炊くため、御殿場に主力工場を置いていると言います。
「あんは酸味のある果物と相性がいいので、近隣で採れるフルーツと合わせてアイスクリームにしたり、ソースにしたり、可能性は無限にあると思います」(小原さん)
“Maison KEI”では、静岡県産など、できるだけ生産地が近い食材を使っています。小林シェフはこの店の特性を、“食材が旅をしないこと”だと言います。
「パリのお店だと、どうしても食材に旅をさせることになるけれど、この店は海にも山にも近いから、食材が豊富だし鮮度が違う。“そんな食材の命をよりおいしく仕立てるのがこの店だよ”といつも言われています」(佐藤さん)
そうした地域と歩調を合わせるスタイルは、スタッフのユニフォームにも共通しています。この店を“キャビアやフォアグラのような高級品ではなく、地場の食材を味わう場所”だと捉える小林シェフは、ユニフォームも高級すぎる素材でなく、靴も革靴をやめ…と、より素朴で実用的な方向にシフトしていきました。
「何より動きやすいのが助かります。昔ながらのコックコートは耐久性や安全性は良くても、硬くて動きにくい。今のユニフォームは軽いし柔軟だし通気性もいい。これに慣れたら元には戻れません」(スーシェフ/杉本さん)
「僕は肩幅が広くて既成服が合いづらいのですが、この制服は1人1人採寸してくれるので、心地良くて仕事もしやすいです」(山口さん)
実際このユニフォームは、1年がかりで吟味を重ねて選ばれたもの。最終調整の際にはセブンユニフォームの会議室に小林シェフやとらやの会長、社長までが集結し、徹底したディスカッションの末、決定したそうです。
「飲食店のユニフォームで最も重視したいのは、やはり清潔さ。一括してクリーニングするのはもちろん、毎日仕込み作業を終えたら、全員エプロンを清潔なものに付け替えて、お客様をお迎えしています」(杉本さん)
「レセプションのユニフォームは春夏用と秋冬用の2種類があるのですが、衣替えをするとお客様がすぐに気づいて、声をかけてくださいます」(高橋さん)
時代の先端を行く三ツ星シェフと、歴史ある老舗の経営者が生み出した新たな形態のお店は、早くも御殿場に根を張り始めているようです。
メゾンケイ
Maison KEI
- 〒412-0024 静岡県御殿場市東山527-1(東山観音堂斜め向かい)
- 電話:0550-81-2231
- 車:東名高速道路御殿場ICから約10分
- 電車:JR御殿場線 御殿場駅からタクシーで約15分
- 営業時間:ランチ 11:30~ / ディナー 17:30~
- 定休日:火曜日・水曜日